ようこそ、鋼球の世界へ
LESSON2 今、ココで回ってます
- キューすけくん
- アマツジ先生
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ココで回ってます「自動車」
自動車は、鋼球の宝庫。「エンジン」や「モーター」、「発電機」、車軸とタイヤをつなぐ「ハブ」に「等速ジョイント」ギアに関わる「トランスミッション(変速機)」、や「ワイパー」などなど……。現在、ガソリン自動車では“約500~1000個”の鋼球が使われています。動力源がモーターに置き換わることや自動運転の普及などにより新たな需要も生まれてきます。自動車が安全に走行するためには、この球すべてが破損することなく回り続けることが必要なのです。
- キューすけくん
凄い数ですね!
これって、球がないとどうなるんですか?
- アマツジ先生
ふむ、たとえばモーターを例にとろう。もしベアリングや鋼球がないと、回転するときに莫大な『摩擦』が起きる。すると熱は発生するわガタガタするわで、すぐ故障するであろうな。鋼球が使われることで、摩擦が少なくなり、効率よくパワーを伝えることが出来るようになる。燃費もよくなるし、二酸化炭素の排出量も少なくなって、家計にも地球にもやさしくなる、という訳ぢゃ。
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ココで回ってます「飛行機」
私たちが気軽に海外旅行に行けるのは、飛行機がつくられたおかげです。そんな飛行機のエンジンや車輪にも鋼球は使われています。特にジェットエンジン内部の高温・高圧の空気の中で高速回転に耐えるために、とりわけ高い耐熱性と耐久性が必要なのです。
- キューすけくん
ひえ~~~
そんな環境でも大丈夫なんて、どんな材料を使っているんですか?
- アマツジ先生
「M50」と呼ばれる、ジェットエンジン用に開発された特殊な耐熱鋼を使用しておる。ただ「M50」は、ひじょ~に複雑な熱処理をしないと十分な性能を発揮できない。つまり、単にまるくするだけではない、高い加工技術をもった鋼球メーカーだけが取り扱える素材なのぢゃ。
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ココで回ってます「家電製品」
エアコンをはじめとする家電製品には、冷却するためのファンモーターが搭載されています。この回転による「音」をいかに抑えるかが、家電製品の大事な要素です。近年の製品が“どんどん静か”になってきたのは、中で使われる鋼球が“どんどんまるく”なってきたからです。この「静粛性」は、鋼球が貢献している要素の中でも大事な性質のひとつです。
- キューすけくん
そういえば洗濯機も冷蔵庫も、どんどん静かになってきましたね。
これっていつ頃からなんですか?
- アマツジ先生
それはのう、日本に“3種の神器(電気洗濯機・電気冷蔵庫・白黒テレビ)”が現れた1950年頃までさかのぼる。この頃は欧米製のベアリングが主流で、「静か」であることは二の次であった。そう、「音」に着目したのは、実は日本のメーカーなのぢゃ。家電製品だらけの世の中、今や高品質で高精度な日本のベアリングと鋼球は、世界中で愛用されておるのだ。
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ココで回ってます「産業機械」
機械部品を作り出す工作機械や、工場の生産ラインで使用される製造ロボット、超高層ビルを作る大型クレーンに、トンネルを掘る巨大な掘削機などの建設機械……。ものづくりの現場で活躍する産業機械たち。これらの回転部分や動作部分にも、ボールが使われています。
- キューすけくん
へー、ロボットとかクレーンの中でも回ってるのかぁ。
どれくらいの速さで回るんですか?
- アマツジ先生
たとえば工作機械用のスピンドルモーターなら、1分間に10万回転以上ぢゃ。
- キューすけくん
じゅ、10万回!?想像しただけで目が回りそう!
- アマツジ先生
この、超・高回転に対応するためには、ボールの比重も軽くないといかん。だから窒化珪素球といって、一般的な鋼球よりも軽い球が使われておる。もちろん軽いだけではダメで、十分な精度と耐久性が要求されるのぢゃ。
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ココで回ってます「人工衛星」
天気予報や衛星放送、カーナビの位置情報など、宇宙から私たちの生活を豊かにしてくれている人工衛星。ここにも鋼球は使われています。宇宙環境は微小重力、高真空、宇宙放射線、広い温度範囲など、地上とは大きく異なる環境のため、ボールに要求される特性も地上とは大きく異なります。
- キューすけくん
すごーい!宇宙でもボールが回ってるんですね!
- アマツジ先生
さよう。衛星の「姿勢制御用ホイール」に使用されておる。真空の宇宙空間で、微量の潤滑油だけで10年から15年の長期間、安定して回転し続けねばならぬのだ。回転すると振動が起こるが、衛星の観測機能に影響を与えてはいかんから、振動も極力抑える必要がある。他にも打ち上げ時の振動や衝撃環境、軌道上での温度変動にも耐えねばならぬし……。とりわけ高い品質を求められておるのぢゃ。